HorliX -wikipedia 風解説-

HorliX(ホーリックス)は、Apple社の Mac 用OS (OS X)で動作する DICOM ビューアである。

概要

Mac OS X で動作するオープンソースの DICOM ビューアとしては、OsiriX が有名であるが、商用版とオープンソース版の機能の乖離が顕著になり、OsiriX ベースの Horos プロジェクトが誕生した。ネイティブでの日本語化が進まず、日本での普及は今一つであった。そのため、まず HorosJ という Horos の日本語化を目指したプロジェクトが有志の手によって誕生した

HorosJ の日本語化リソースは、Horos のコードに取り込まれるなど一定の成果を上げた。

この HorosJ が名前を変えたものが、HorliX プロジェクトである。

名称は変更になったが、その後も、HorliX 開発チームは Horos プロジェクトに、例えば、ROI-color-rotation-UI のソースコードを提供するなど、一定の協力関係にあった。

Horos Ver3.2.0 のリリースノート HorliX チームへの謝辞が述べられている

最近では、Mac OSX Catalina での移行でビューアのアノテーション文字が乱れるという問題が発生したが、HorliX 開発陣によって解決策提示された。

HorliX の由来

HorliX のフォーク元である Horos と OsiriX から。さらに、オセアニアの名馬ホーリックスにちなんで命名された。「Hor ナントカ X としたかったので、伝説の名馬 Horlics に因んで命名しました」(初期の github より)。
なお、競走馬の方のホーリックスの英綴は Horlicks である。母が Malt (モルト:)であったため、英国圏で流通している麦芽飲料の Horlicks からその名が取られた。
両者は本来は別物であるが、HorliX のアプリアイコンはこれを意識してか白いユニコーンがあしらわれている。

特徴・歴史

Horos Ver3.0.1 からフォークしたため、Horos Ver3.0.1 の主要な機能は受け継がれている。ただし、HorliX Ver0.0.1 の時点でもアップデートアラート、クラウド機能などは省かれていた。なお、アップデートアラートに関して開発者は「バージョンチェックなどして、いちいち最新版へのアップデートを促すのが面倒だったからだ。バージョンアップするかしないかはユーザーが自由に決めればいいことではないか」と述べたことがある

Horos から分岐・独立した理由は、主要な開発者である猪股弘明氏が ORCA のメーリングリストで以下のように述べている。

Horos でROIを使うとき、使う毎にその描画色がくるくると変化すると
思いますが、その元になったコードは私が送ってます。
いわゆる ROI-color-rotation-UI というやつです。
このときの改変のやり取りは今でも残ってますね。
https://github.com/horosproject/horos/issues/342

ここら辺までは、Horos と協調していたんですが、当時(2018年)課題に
なっていた 64bit 対応がもたもたしていたことや彼らが若干「やりすぎ」て
しまうところが気になって、結局、独立してしまいました。

「やりすぎ」というのは、具体的には、ROI-color-rotation-UI でいうと
彼らは記録時のファーマットまで改変してしまってます。
ROI を XXXX.roi のようなファイルを書き出したとき、色情報まで入れ込んじゃって
いるので、互換性が崩れちゃってるんですよ。
上であげた github issues 上での議論を見てもらえればわかると思いますが、
元々は「ROI の描画色が単色だと視認性が良くないので、マルチカラーを扱える
ようにしたい」というかなりシンプルで(おそらく有用な)ユーザーさんからの
指摘から始まってます。
私も色が変わるのは便利だなと思いますが、記録するほどのことでもないと
思い、Horosの改変は取り込みませんでした。
「やりすぎ」と感じるのは、こういった点です。

Ver 0.0.2 で、日本語リソースの強化が図られた。

2018/08/08 に Mac AppStore より、Ver 1.0.3 (商用版)がリリースされた。
各国 AppStore で売り上げ・ダウンロード数ともに上位を記録、ユーザーからも比較的高い評価を得ていた。

 

しかし、2019/03/20 に配信が停止。OsiriX MD のサポート代決済日の前日であったため、様々な憶測が飛んだ。開発者も「(スポンサーである)purview 社の出資者ひとりから Apple 社に申し立てはあったのは事実だが、反論したところ反応はなくなった。それで収束したと思っていた。どこかから圧力がかかったのかもしれないが、真相はわからない。突然のことでびっくりしている」(facebook 内での発言など)としている。

これに伴い、有償版の配信方式も直接配信方式に変更になった。

なお、Horos プロジェクトのモデレーター(兼 purview 社幹部)も github issue ページで以下のように述べている。


HorliX has been making use of the Horos code basis and work to create their own software distribution, which also features a commercial version. In principle, that’s ok considering the license terms that rules Horos project (LGPL).

「HorliX は Horos のコードを元にして、商用版を含むディストリビューションを作製してきた。原則的には、この行為は Horos プロジェクトで採用されているライセンス(LGPL)を鑑みても問題ない」(著者意訳)


Ver 1.0.3 は AppStore から配信している関係上、サンドボックス機能(sandbox:あるアプリが他アプリ・ユーザーが生成したデータなどへのアクセスを制限する一種のセキュリティ強化機能)が有効になっていたが、Ver 1.0.5 から、この機能は撤廃された。開発者も配信停止以前よりブログ上では『院内設置には sandbox off 版の方が便利かもしれません』と述べていた。

現在の最新バージョンは 1.0.7 である。

ただし、Apple の方針で

・MacOSの画像処理の基礎が OpenGL から Metal に移行する
・Apple のデバイスの CPU が Intel から ARM に移行する

ことが既に決まっているため、これを受けて、コミュニティ内ではこれらのアーキテクチャに対応する次世代バージョンの検討が始まっている。

 

サポートなど

AppStore 配信時代の発売元は Hiroaki Inomata (猪股弘明氏 精神科医)とクレジットされていたが、現在はフェイザー合同会社(正確には PHAZOR合同会社)が実質的にサポートしている。

基本的な使い方は、サイトブログで適宜解説されている。メーリングリストにおいても各種アナウンスの他、技術的なサポートがなされている。

 

ダウンロードサイト

使用期限を設定した無料トライアル版が、HorliX プロジェクトサイトからダウンロードできる。

download page:  https://phazor.info/HorliX/?page_id=105 ただしキャプションなどが英語

download page:  https://phazor.jp/?page_id=486 こちらは日本語ページ

上記サイト以外にもアプリのダウンロードが可能なことを謳い、ユーザー情報の入力を促すサイトが散見されるが、すべて非公式である。

公式サイトからダウンロードする際には、ユーザー登録などは一切不要であり、開発者も「おそらくフィッシングサイトであろうから」と公式サイト以外からダウンロードしないよう注意を促している

 

現在は(ほぼ)無料

上記ダウンロードサイトで入手できるトライアル版はトライアルとは言うものの使用期限が設定されている点を除いては商用版とほぼ同一である。

例年、年末にその時点での最新版がアップロードされる。慣例的に、使用期限は次年末日に設定されているため、1年に1回、再ダウンロードする手間さえ惜しまなければ、ほぼ最新版が実質的には無料で使用できる。

次世代バージョン

Horos/HorliX の基本設計は、現代から見ると必ずしも目新しいものではない。

確かに機能は豊富であるが、これは他のオープンソースのライブラリの長所を巧妙に取り込んだ結果であり、まとめるのが難しく、メンテナンスという観点からすると逆にデメリットになりうる。

そこで、2022 年頃より、現在の HorliX とは全く異なる設計のビューアーが関係者の間で検討されるようになった。

営利目的ではないため、開発速度は速いものではないが、Metal に完全に対応した 2D ビューア・3D ビューアーのプロトタイプが完成済みである。

Post HorliX の意味をかけて PHORLIX などと呼称されている。

2023 年には、RayCast による Volume Rendering 機能が実現された。

関係者の間でコードは共有されているが、一般公開はされておらず厳密な意味ではオープンソースではない

 

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