COVID-19 -PCR検査の感度・特異度など-

2020年3月現在まだまだ世間を賑わせている新型コロナであるが、PCR 検査の感度・特異度が話題になった。

けっこう高名な先生でもあからさまに間違えている例もあり、某所で教育目的でごく基本的な問題を出したら、それなりに好評だったのでこちらにも転載。


問1 一般的に臨床検査の結果は必ずしも正しいとは限りません。検査結果をどの程度信頼すべきか?を示す指標として、感度・特異度などという概念があります。

下の表をみて( )に当てはまる語句を埋めてください。

1. a/(a+c)を( )という。

2. d/(b+d)を( )という。

3. a/(a+b)を( )という。

4. d/(c+d)を( )という。


まずは、定義。

答えはよく知られているように

1.感度
2.特異度
3.陽性的中率
4.陰性的中率

です。定義知っていれば答えられる問題なんですが、問題の前提や意味を取り違えるとこの後の理解が覚束なくなる。

前提として、疾患の有り無しは確定していると考えます。現実的には、他のより精度の高い検査をしていれば、疾患の有無はわかるので、こう考えて問題ないわけです。


問2 風邪っぽい症状を呈した100人の患者さんがある医療機関を訪れました。このうち20人は新型コロナ感染症だとします(a + c = 20[人])。検査はPCRを用いておこないます。新型コロナに関する感度・特異度は、それぞれ 70%、90% です。

1. a, b, c, d を求めてください。

2. 陽性的中率はいくらになるでしょう。


感度:a/(a + c)=a/20=0.7 より a=14
特異度:d/(b + d)=d/80=0.9 より d=72
a + c = 20 より、c = 6。b + d = 80 より c = 8。
結局、a = 14、b = 8、c = 6、d = 72。

感度・特異度は、その定義から言って、ある検査がどの程度確からしいか(陰性だった場合には、どの程度除外できるか)を示す指標です。
ただ、患者さん側からすると「検査陽性のとき、それはどの程度信用していいか」の方が関心高いので、
陽性的中率=a/(a+b)
が重要になってきます。
陽性的中率は、14/22 = 0.6363… となって 64 %。

なお、この問題設定は、けっこう話題になったある方の「呟き」からきています。

問題あります。
陽性的中率に何か勘違いがありましたしたかね。


問3 以上の簡単な計算により以下の表が得られました。

一般に、検査陽性であっても罹患していない受診者もいます。これを( 1 )と言います。逆に、検査陰性でも実はその疾患にかかっている人もいます。こちらは( 2 )と言います。

(1)、(2)を何というか。


(1)は偽陽性、(2)は偽陰性です。

このケースでは偽陰性が多いのが特にたちが悪いといえます。100人検査した場合、6人は(実際には感染しているのに)「感染者ではない」というお墨付きを与えてしまうからです。
(若干、逆説的に見えますが)「検査をすればするほど感染蔓延のリスクが増える」と言われていたのは、こういった背景があったからです。

なお、PCR はラボレベルでは、DNA 数分子でも確実に増幅できる感度の高い検査ですが、臨床検査では咽頭ぬぐい液などを検体に使うため、どうしても感度は落ちます。

このようにPCR検査は、単体としてはそれほど信頼は高くない。

この欠点を上手く補って臨床に役立てたのは中国で、逆に闇雲に使って裏目に出たのが韓国という気がします。(→『COVID-19 -中国でのトリアージ-』)

なお、COVID-19 というのが傷病名(病気の名前)です。いわゆる新型コロナ感染症。ウイルス自体は、SARS-CoV-2 と言います。

 

猪股弘明(精神科医)

 

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