Nitrogen の謎

使うばかりではアレなので、HorliX/Horos/OsiriX のソースコードを読む。

早速、AppController(現在でいうところの AppDelegate です)の init メソッド内の以下のところでつっかかる。

AppController.m

[[NSFileManager defaultManager] removeItemAtPath:[[NSFileManager defaultManager] tmpDirPath] error:NULL];

なんだよ tmpDirPath って(笑)。

もちろん、ノーマル NSFileManager にこんなメソッドはなく、おそらくどこかで拡張してんだろうなあと物色したら、Nitrogen というフォルダ(のサブフォルダ)に収められていた。

しかし、なんだろ、Nitrogen って?

Objective-C におけるクラスの拡張(というのだろうか?オーバーライドといっていい)は、カテゴリを使うという手法があるようだ。
カテゴリによって新たにつくられたクラスは、慣例的に「元のクラス+特徴」というファイル名を持つ。

だから、上の例では NSFileManager+N2.h と NSFileManager+N2.m で NSFileManager の拡張機能を担っている。

この N が Nitrogen から来ているのでは?と想像はつくが、なぜ Nitrogen というネーミングにしたんだろうねと疑問に思ったという次第です。

 

Horos Mobile

kindle 本は iPad で読む派だったのだが、バッテリーがへたってきたため、新しく iPad Air を導入。
ついでで Horos Mobile というアプリを落とす。
ここらへんが Horos らしいなと思うのだが、操作画面になかなかたどり着けない。
あと、これサブスクで契約しないと実質的には使えませんかね。

ちゃんと使えばそれなりの機能持っているのかもしれないが、これならシンプルな OsiriX HD の方がいいかな。

 

猪股弘明
医師:精神科(精神保健指定医)
Horos: contributor
OsiriX(OpenSource Version):contributor
HorliX: developer

ORCA, OpenDolphin, OsiriX は三種の神器だったのか?

– ORCA, OpenDolphin, OsiriX は三種の神器だったのか?

ある時期まではそうだったと思う。具体的には 2010年代前半あたりまでは。

ORCA(オルカ) というのは、日本医師会が主体となって開発が進められたレセコンソフトで、その当時はこれ一台で診療所レベルならば会計から保険(電子)請求まで用が足りてしまった。ただし、操作性には若干の難があり、現実的にはオルカと連動する電子カルテと組み合わせて用いられることが多かったと思う。OpenDolphin (オープンドルフィン)は、その代表格で 2013 年前後はかなり導入されていたようだ。OsiriX (オザイリクス)は、ご存知、DICOM ビューアだ(簡易な PACS 機能もついている)。当時はかなり安価に入手できた。

当時は、どれもオープンソースでソースコード自体が「一般」公開されていたので、スキルとやる気さえあれば自前でインストールできて、よほど凝った使い方をしなければ、クリニックでの自力運用も可能だったように思う。レセコンソフトとそれに連動する電子カルテと画像ビューアがほぼ無償で手に入ったのだ。新規に開業する医師にとっては、非常に心強いものであったと思う。

これはそれ以前の状況と比較するとわかりやすいと思う。

ORCA 登場以前は、メーカー製レセコンや電子カルテは「5年で300万」くらいが相場で、クリニック経営上はかなりの負担になっていた。画像ビューアは、若干事情が違っていて、そもそも OsiriX あたりに相当する製品はなかったように思う。病院の放射線科で画像診断に使われるようなビューアとなると軽く100万は超える。小規模なクリニックだと、「外部で撮像された画像をチェックする」程度しか使わないので、そういうメーカー製ビューアは明らかにオーバースペックだ。

だから、ORCA-OpenDolphin-OsiriX というのは、それぞれが強力なツールだったし、三つあわせれば非常に「頼りになる」枠組みだったのだ。

では、現在ではどうだろう?

まず、OsiriX だが、現在でもオープンソース(OpenSource: OS)版は開発されているとはいえ、OS バージョンをそのままビルドしても商用版の OsiriX MD になるわけではない。だから、現在のプロジェクト自体を以前の OsiriX の延長と考えるのは無理があるだろう。実際、各国で医療機器としての承認/認証を受けていることからわかるように、「医療機関向けの医療用ソフト」にコンセプトを変えたと見る方が妥当だろう。
病院勤めの臨床医/研究医がお手軽に OsiriX で患者さんの画像をチェックするというような使い方はもうできないと思う。

次に OpenDolphin だが、いわゆる「本家」の開発元が2020年上半期に LSC(ライフサイエンスコンピューティング)から medley(メドレー)に移った。
メドレーは、
・クラウド版を重視
・オープンソースとしてのプロジェクトという認識が希薄
なようで、今後は dolphin-dev の github リポジトリのソースコードが更新されるというのはちょっと期待できない感じだ。実際、OpenDolphin は開発の経緯もあるためだろうかメドレー自体「オープンソースである」とは明言していない。
(→結局、LSC での販売も正式に終了し、メドレーも普及させる意図はないようなので、実質、この系列からの商用版の利用はできくなったと考えてよいでしょう)

最後に ORCA。これはオープンソースであるが、開発言語やミドルウエアなどが独特で、ソースコードからビルドして使っているという医療関係者はほぼいなかったと思う。そこにきて、オンプレミス版(クラウドタイプではなく、院内 LAN でローカルで走らせるタイプ)が一部有償化されてしまった。医療機関で新規導入をはかる際には有償契約がほぼ必須だろう。
やはり、これも「ちょっと使ってみる」といった使い方はできなくなったように思う。

だから、これらソフトは、現在としては 2010年代前半のように「これ使ってれば間違いはない」といったような、絶対的な存在ではなくなったように思う。
最初の問題提起に戻ると、ORCA-OpenDolphin-OsiriX という枠組みはもはや「三種の神器」とも言えるほど特別な存在ではなくなった、というのが私なりの感想めいた結論だ。

 

追記

現在(2024)になって、オープンソース離れはさらに加速しているようだ。

理由はいくつかあると思う。

ソースコードが公開されているからといって必ずしも理解できるとは限らない。特に日本の場合、医師などは高卒後いきなり医学部に入学する人がまだまだ多いため、この分野の基本的なスキルに欠けている。

オープンソースが素晴らしいと言ったところで、その内容が理解できなければ宝の持ち腐れだ。

他分野でもその傾向があるようだが、皆が使うカーネルや基本的ライブラリはオープンソース開発方式を維持、個別のアプリケーションは非公開で開発、という風潮があるようだ。

ところで、上の記事自体、公開して4年も経っていないのだが、既に情報が古くなっている感があるので、訂正などを入れておく。

OsiriX もはや再びオープンソース化することは考えにくい。後継と期待されていた Horos もほぼ更新すらされていない。
われわれも HorliX というのを出していたが、最近はもっぱら PHORLIX の方に注力している。こちらはオープンソースではない。発足当初などソースコードも公開していたのだが、手伝ってくれる人や助言してくれる人はほぼ固定されていたため、公開するのをやめてしまった。

OpenDolphin そもそもこのプロジェクト自体の「オープンソース」性が疑わしい、という身も蓋もない状況になってしまっている。

ORCA WebORCA 時代に突入。データベースの定義などは公開されているもののプログラム自体は公開されていない。

 

猪股弘明(医師:精神科:精神保健指定医
OpenDolphin-2.7m, HorliX 開発者

⭐️ 参考
OsiriX Lite の現在
ORCA
OpenDolphin-2.7(m) と ORCA について
OpenDolphin について
OpenDolphin と電子カルテの3要件とメドレー
OpenDolphin -wiki 風解説-