SARS-CoV-2 と分子生物学とバイオインフォマティクス

SARS-CoV-2 のウイルス学的・分子生物学的特徴。

構造

出典はここ

塩基配列

Wuhan での初期のウイルスの塩基配列はかなり早い段階から解読されていた。例えば、最後の方の配列は下図の通り。
ゲノムサイズは 29903 bp と割と大きい。

 

塩基配列(3文字)→アミノ酸

塩基配列がわかっているのだから、当然、対応するアミノ酸もわかる。
Spike (イラストでよくトゲトゲとして描かれている部分)を形成しているタンパクの一次構造は以下の通り(長いよ)。

M=Methionine(メチオニン), F=Phenylalanine(フェニルアラニン), V=Valine(バリン)… などと読む。

MFVFLVLLPLVSSQCVNLTTRTQLPPAYTNSFTRGVYYPDKVFRSSVLHSTQDLFLPFFSNVTWFHAIHVSGTNGTKRFDNPVLPFNDGVYFASTEKSNIIRGWIFGTTLDSKTQSLLIVNNATNVVIKVCEFQFCNDPFLGVYYHKNNKSWMESEFRVYSSANNCTFEYVSQPFLMDLEGKQGNFKNLREFVFKNIDGYFKIYSKHTPINLVRDLPQGFSALEPLVDLPIGINITRFQTLLALHRSYLTPGDSSSGWTAGAAAYYVGYLQPRTFLLKYNENGTITDAVDCALDPLSETKCTLKSFTVEKGIYQTSNFRVQPTESIVRFPNITNLCPFGEVFNATRFASVYAWNRKRISNCVADYSVLYNSASFSTFKCYGVSPTKLNDLCFTNVYADSFVIRGDEVRQIAPGQTGKIADYNYKLPDDFTGCVIAWNSNNLDSKVGGNYNYLYRLFRKSNLKPFERDISTEIYQAGSTPCNGVEGFNCYFPLQSYGFQPTNGVGYQPYRVVVLSFELLHAPATVCGPKKSTNLVKNKCVNFNFNGLTGTGVLTESNKKFLPFQQFGRDIADTTDAVRDPQTLEILDITPCSFGGVSVITPGTNTSNQVAVLYQDVNCTEVPVAIHADQLTPTWRVYSTGSNVFQTRAGCLIGAEHVNNSYECDIPIGAGICASYQTQTNSPRRARSVASQSIIAYTMSLGAENSVAYSNNSIAIPTNFTISVTTEILPVSMTKTSVDCTMYICGDSTECSNLLLQYGSFCTQLNRALTGIAVEQDKNTQEVFAQVKQIYKTPPIKDFGGFNFSQILPDPSKPSKRSFIEDLLFNKVTLADAGFIKQYGDCLGDIAARDLICAQKFNGLTVLPPLLTDEMIAQYTSALLAGTITSGWTFGAGAALQIPFAMQMAYRFNGIGVTQNVLYENQKLIANQFNSAIGKIQDSLSSTASALGKLQDVVNQNAQALNTLVKQLSSNFGAISSVLNDILSRLDKVEAEVQIDRLITGRLQSLQTYVTQQLIRAAEIRASANLAATKMSECVLGQSKRVDFCGKGYHLMSFPQSAPHGVVFLHVTYVPAQEKNFTTAPAICHDGKAHFPREGVFVSNGTHWFVTQRNFYEPQIITTDNTFVSGNCDVVIGIVNNTVYDPLQPELDSFKEELDKYFKNHTSPDVDLGDISGINASVVNIQKEIDRLNEVAKNLNESLIDLQELGKYEQYIKWPWYIWLGFIAGLIAIVMVTIMLCCMTSCCSCLKGCCSCGSCCKFDEDDSEPVLKGVKLHYT

出典はここ

 

(続く)

猪股弘明(医師)

 

COVID-1 -中国でのトリアージ-

前にも述べたが、COVID-19 の(臨床での)PCR検査はそれほど感度は高くない
日本はその使い方に慎重だが、逆に信用しぎてまずいことになっている国がある。お隣、韓国だ。

高危険群の死亡、どう防ぐ…「高齢者、基礎疾患者の優先検査を」

とさすがにメディアからも批判の声が上がっている。「疑い」扱いの人に検査して陰性だったら、その人は安心して外に出歩いてしまう。実は、偽陰性でした(=感染していました)、というのはかなりまずい。

 

一方、現在では収束に向かいつつある中国では、医療者の悪戦苦闘していいるうちにかなり臨床的なトリアージ法が確立されたようだ。

Therapeutic and triage strategies for 2019 novel coronavirus disease in fever clinics. LANCET, Zhang et al.

トリアージのフローはこんな感じ。

SpO2 や体温でスクリーニングした後、CTとCRPで患者を確定している。

なるほどなといたく感心した。

 

なお、CT の感度などに関しては

Correlation of Chest CT and RT-PCR Testing in Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) in China: A Report of 1014 Cases. Radiology, Tao et al.

をご覧ください。

なお、COVID-19 というのが傷病名(病気の名前)です。いわゆる新型コロナ感染症。ウイルス自体は、SARS-CoV-2 と言います。

 

猪股弘明(精神科医)

 

COVID-19 -PCR検査の感度・特異度など-

2020年3月現在まだまだ世間を賑わせている新型コロナであるが、PCR 検査の感度・特異度が話題になった。

けっこう高名な先生でもあからさまに間違えている例もあり、某所で教育目的でごく基本的な問題を出したら、それなりに好評だったのでこちらにも転載。


問1 一般的に臨床検査の結果は必ずしも正しいとは限りません。検査結果をどの程度信頼すべきか?を示す指標として、感度・特異度などという概念があります。

下の表をみて( )に当てはまる語句を埋めてください。

1. a/(a+c)を( )という。

2. d/(b+d)を( )という。

3. a/(a+b)を( )という。

4. d/(c+d)を( )という。


まずは、定義。

答えはよく知られているように

1.感度
2.特異度
3.陽性的中率
4.陰性的中率

です。定義知っていれば答えられる問題なんですが、問題の前提や意味を取り違えるとこの後の理解が覚束なくなる。

前提として、疾患の有り無しは確定していると考えます。現実的には、他のより精度の高い検査をしていれば、疾患の有無はわかるので、こう考えて問題ないわけです。


問2 風邪っぽい症状を呈した100人の患者さんがある医療機関を訪れました。このうち20人は新型コロナ感染症だとします(a + c = 20[人])。検査はPCRを用いておこないます。新型コロナに関する感度・特異度は、それぞれ 70%、90% です。

1. a, b, c, d を求めてください。

2. 陽性的中率はいくらになるでしょう。


感度:a/(a + c)=a/20=0.7 より a=14
特異度:d/(b + d)=d/80=0.9 より d=72
a + c = 20 より、c = 6。b + d = 80 より c = 8。
結局、a = 14、b = 8、c = 6、d = 72。

感度・特異度は、その定義から言って、ある検査がどの程度確からしいか(陰性だった場合には、どの程度除外できるか)を示す指標です。
ただ、患者さん側からすると「検査陽性のとき、それはどの程度信用していいか」の方が関心高いので、
陽性的中率=a/(a+b)
が重要になってきます。
陽性的中率は、14/22 = 0.6363… となって 64 %。

なお、この問題設定は、けっこう話題になったある方の「呟き」からきています。

問題あります。
陽性的中率に何か勘違いがありましたしたかね。


問3 以上の簡単な計算により以下の表が得られました。

一般に、検査陽性であっても罹患していない受診者もいます。これを( 1 )と言います。逆に、検査陰性でも実はその疾患にかかっている人もいます。こちらは( 2 )と言います。

(1)、(2)を何というか。


(1)は偽陽性、(2)は偽陰性です。

このケースでは偽陰性が多いのが特にたちが悪いといえます。100人検査した場合、6人は(実際には感染しているのに)「感染者ではない」というお墨付きを与えてしまうからです。
(若干、逆説的に見えますが)「検査をすればするほど感染蔓延のリスクが増える」と言われていたのは、こういった背景があったからです。

なお、PCR はラボレベルでは、DNA 数分子でも確実に増幅できる感度の高い検査ですが、臨床検査では咽頭ぬぐい液などを検体に使うため、どうしても感度は落ちます。

このようにPCR検査は、単体としてはそれほど信頼は高くない。

この欠点を上手く補って臨床に役立てたのは中国で、逆に闇雲に使って裏目に出たのが韓国という気がします。(→『COVID-19 -中国でのトリアージ-』)

なお、COVID-19 というのが傷病名(病気の名前)です。いわゆる新型コロナ感染症。ウイルス自体は、SARS-CoV-2 と言います。

 

猪股弘明(精神科医)

 

日本総合病院精神医学会

岡山で日本総合病院精神医学会が開催されていた。
https://www.med-gakkai.org/jsghp2019/

行き損ねたw

大抵の精神科医は、日本精神神経学会には、(一度は)所属していると思う。一度、というのは、所定の資格を取ったり、医局を離れたり、開業したりすると、「かったりーよ」とばかりにやめてしまう人もいるからw

由緒ある正統派の学会ではあると思うのだが、それゆえ、ちょっと思い切ったことができにくい学会になった感もある。

かといって、あまりに小さな学会だと、勉強会的な雰囲気が出てしまって、ワクワク感がない。

これくらいの規模の学会の方が、身の丈にあっていて、現実的には、役に立つのかもしれないなーと思った次第。

 

ANN2b

 

iPS 関連とサポート

出自が物理(工学)系なので、ウェットの生物学には詳しくないのだが、最近、ネットなどで iPS 関係の記事をよく目にするので、ちょっと書いてみる。

「iPS細胞」実用化に時間がかかるワケ

偉大な山中先生が何を考えているのかまでは、私などが知る由もないが、何かこれ、迷走し始めた感じがする。iPS 研究が、ということではなく、その研究開発支援体制が迷走し始めた、っていう意味です。

上の記事でも触れられているが、「加齢黄斑変性では・・(中略)・・1年で1億円がかかる」と研究には金がかかるという点をアピールして支援の継続を訴えているが、これはちょっと違うのでは???と思った。

もう、はっきり書くと逆効果。

件の移植手術は、失敗とは言わないまでにせよ、「肝心の視力は「良くも悪くもなかった」ということで、治療という意味ではあまり望ましい結果とはいえなかった」という認識を持っている医療関係者は多いと思う。
私も、あの最終報告で「えええっ!」と思ったのは、OCT(Optical Coherence Tomography:光干渉断層撮影)データの取り扱い。えーと、マトモなOCTって一台1000万超えは当たり前。高いやつだと数千万もする(一般的に理学・医学向け測定機器は高いものが多いですが、特殊領域の機器としてはかなり高額な部類)。なのだが、上手く活用されていたかというと、んーどうなんでしょ。
研究にカネがかかるのは当たり前だが、問題はその使い方なのだ。

特に神経系の場合は、「悪くなった部分を置き換えた程度で、機能獲得のための後プロセスが自然におこるというのはちょっと考えにくい」という事情もある。

このままの方向性で事業化へゴリ押しで進むより、せっかく課題が明らかになったのだから、ここは一端ベーシックなリサーチに立ち戻るっていうのもあっていいのかもしれない。


あと、私が、ちょっと不満に思ったのは、こういった状況で「科学ジャーナリスト」や「サイエンスウオッチャー」を自称する人たちが、コメントしないこと。

上の件でも、備蓄事業を継続した方がいいのか、それとも企業サイドがいう「一種類の細胞を工夫して使う」方がいいのか、誰も明確な意見を言わない。
日本の「評論家」ってなんなんだろうねと思う。

なんて事言ってたら、毎日にこんな記事が。

iPS細胞分化時に異常 がん化関連も 容器、機関で差

治療に供する iPS 細胞の安定供給を目指してストック事業は始められたと思うのだが、現状がこれだと素人目にも基本的なところで困難を抱えているのではないかとつい疑ってしまう。

これはアカンでしょ

やはり検証が必要だと思うし、これまでにもそれなりに巨額な公的資金が投じられているわけだから、該当組織は何らかのコメントを出すべきでしょう。

 

ANN2b